『リレー小説』

名無しひー誕A、名無しひー誕B、名無し初めて、姫子


前書き
リレー小説開始します。
レス数とか適当ですんで。
続き思いついた人が書いてください。
空気一切読まなくていいんで。
1番手 名無しひー誕A
後ろにはひんやりとした壁が、目の前にはすごい形相の安倍の顔が迫っていた。
吉澤本人もこの現状に至った経緯、理由をよく把握できず、ただ目をぱちくりとさせて
安倍の目を覗き込んでいた。

「何でなっちじゃダメなの?」

この体勢で安倍がそう問いかけてくるのももう何度目なのだろうか。
さっきから安倍の口からは二種類の言葉しか発せられていない。

「何でなっちじゃなくて…」

吉澤の肩を掴む手に力がいっそう込められる。
その痛みよりも、安倍の口から告げられた名前に胸の奥がどくんとなる痛みの方が数倍上だった。

あのっ…。
さっきから言ってること、意味わかんないんすけど。
急に呼び止められたと思ったら突然変なこと言い出すし」

何とか言葉を紡ぎ出して安倍に問い返した。

「だって…もう裕ちゃんは近くにいないんだよ?
なっちはこんなに近くにいるのに何で裕ちゃんがいいの?
ねえ、よっすぃー、ねえってばっ。」

扉を隔てた廊下を伝い、他のメンバーたちの話し声が微かに聞こえていた。
さっきまでは吉澤も安倍もその輪の中にいたはずだった。
その声が今はこんなにも遠い。

「何、言ってるんすか?
吉澤は別に中澤さんのことなんて…」
「嘘。
さっきからケータイばっかり気にしてるよ。
それ、裕ちゃんからのメール待ってるからでしょ?」

「っ…」

吉澤は言葉を呑んだ。
確かに、ケータイを気にしていた。
その待ちわびてる相手も中澤に間違いない。
けれどそれは今日が吉澤の誕生日だからな訳で元メンバーである中澤から一言もオメデトウと言われてないのが気にかかっているだけ、そうとれなくもなかった。


2番手 名無しひー誕B
「距離の問題じゃないでしょう。そういうのは。
気持ちの問題すよ、要は。
近くにいれば誰でもいい人間に、そんな人間に吉澤は見えるんすか?」

思わず激昂する吉澤の、若さゆえの純粋な言葉に、それゆえに愚かな言葉に安倍は笑みを浮かべた。

見るものにとってはーそして今までの自分にとってもー天使の笑みと思えるそれが、今の吉澤の瞳には禍々しく、腹立たしいものに映った。
3番手 名無しひー誕A
けれど安倍は知っているらしい。
いつの日からか吉澤の心が中澤へと傾き出していたことを。
それが今、仲間なんて言葉の枠を超えようとしていることを。
4番手 名無し初めて
「よっすぃーはそんな人間に見えないよ。
でもなっちはやっぱり、遠くにいる人より近くにいる人の方が…いいと思う。
ねぇ、何でなっちじゃダメなの?こんなに近くにいるのに…。
今一番、よっすぃーの事、見てあげれるのに。何でなっちじゃダメなの?」

先ほどまでの余裕の笑みは、段々と泣き顔に変わっていた。
何で私がこんな目に…。
吉澤は心の中でため息をつきながら、このままでは埒があかないと判断し、肩にかかってる安倍の手に手をかけた。

「すいません、離してください。
安倍さんと、これ以上話す事はありません。
さっきも言ったとおり、これは気持ちの問題です。
距離は関係ありません。
…それに、中澤さんと私は、何にも無いんですよ。
彼女は私の事なんて考えてませんよ。
…もっと、ちゃんとしたパートナーがいるから…。」

そう言って安倍の手を軽く振り払いながら、壁越しに聞こえてくるメンバー達の声に耳を傾けた。
その中でも一際大きな声ではしゃいで、「オイラはね〜。」と叫んでる声が聞こえる。

吉澤は胸が痛むのを感じながら、その声が聞こえないように部屋の奥に移動し、携帯を握り締めた。
5番手 名無しひー誕B
いつからだろう、こういう気持ちを抱くようになったのは。
なんなのだろう、こういう気持ちをどう表現すればいいのだろう。

彼女はそれを無自覚でいるにはあまりに大人に近づきすぎた。
彼女はそれを名づけるにはあまりに子供であった。
6番手 名無しひー誕A
錯覚。
まるで今この世界で自分が一番不幸なのではないのだろうか、という錯覚に陥りそうになる。

距離は関係ない、そう言ったのは吉澤自身。
なのに今吉澤は東京から遥か離れた大阪の地でリアルに体感できるこの距離の遠さを感じていた。
そう、それこそ電話の一つでもあればいくらか気が楽になるのにその願いは届きはしないらしい。
7番手 名無しひー誕B
頬を伝うーー涙。
そっと、携帯のストラップを握り締める。

一昨年、ようやくあの人が仲間として認めてくれた頃。
何を話せばいいかわからなくて、ふと口に出した毎週見てるヒーロー番組の話。
大して面白くもないだろうに、にこにこ笑って聞いてくれた。

帰り道、道端の雑貨屋にすたすたと入っていき、出てきたときには小さな袋を手に持っていた。
「ほい、これあんたがすきなやつやろ」
開けてみると、あのヒーローのストラップ。

あのときの嬉しさは アレヲカッテクレタカラ? アノヒトガカッテクレタカラ?

握り締めた手に力が知らず加わる。
鈍い音。
見るとー手の中には砕けたプラスチックのかけら。
8番手 名無しひー誕A
「あ…」

悪い事というのは重なってやってくるものだったりする。
今がそのいい例だ。


吉澤は自分のてのひらの中で原型を失ったストラップのかけらを見つめ、ぐっと握り締めた。
間もなくして滲んでみえ出したのは、その破片、ではなく吉澤の血だった。
9番手 名無しひー誕B
「痛ぅ・・」

こぶしの中から白い腕にかけて、さっと赤い線が描かれる。

押し殺した声に気がついて、あのにぎやかな声とともに今一番会いたくないひとが飛び出してくる。
「よっすぃ〜、大丈夫かよ!
本番前なんだから注意しろって言っただろ!
カヲリ、オイラが救護室連れて行くから!」

「・・いいです」
「いいって・・」
「子供じゃないんだから一人で行けますよ」
振り払って部屋を出る。
手洗で血を洗い流しながら思う。

私を気遣ってくれたあのひとは悪くない。
私を愛してると言ってくれたあのひとも悪くない。
悪いのはー 

「−−ああ・・これが嫉妬というやつか」
キタナイキタナイ大人のすることと思っていた感情が自分の中にあることに愕然とする
ワタシハコノママキタナクナッテイクノ・・?

ふっ、とまた涙がこぼれる。
そのとき、

「吉澤〜、どうした〜。」

声が、聞こえた。
10番手 名無しひー誕A
顔を上げる。視線を起こす。
涙でぼやけた目でもはっきりと捉えることができるその姿。
紛れも無くそこにいるのは今最も会いたいその人だった。

「な…」

驚きと喜びとが混ざり合って、うまく言葉が出ない。

「吉澤」

何から伝えればいいのか、多すぎて検討もつかない。
11番手 名無しひー誕B
「なかざ・・わ・・さん、ぐすっ」
張り詰めていたものが切れた。たまっていたものが堰を切って流れだす。

「おいおい、まるで私が泣かせたみたいやんか。
ん?手ぇ、どないしたんや!あんたの体はあんただけのもんとちがう、いろんな人にお世話になってるもんやちゅうて何回も言ったやないか!」
救護室に連れて行かれるあいだに、さっきの苛立ちはうそのように消えていた。

「・・・どうも有難うございました、ほら、ちゃんとお礼言いや。」
「・・有難うございました」
救護室にあるベッドの上でちょこんと吉澤は頭を下げる。

「まぁ、たいしたことなくてよかったな。今日もちゃんと出られるらしいし。あんた、関西人のうちの地元でへませんといてや〜」
ぐしぐしと頭を撫でる中澤が、ふとまじめな顔に戻る。
「どうしたんや、なにがあった?」
「中澤さん・・大人になるってどういうことですか・・?」
頭を撫でる手が止まる。
「なんやなんや、吉澤も18歳になって大人の世界に足を踏み入れようとしてるんか〜?
なんやったらベッドもあるし手取り足取り・・」
「まじめに聞いてるんです」

吉澤の顔を見た中澤にさっきと違う笑みが浮かぶーたまにしか見せない、仲間を認めた時の笑み。
吉澤も一度しか見たことがなかったあの笑み。

「もう一度聞くで。何があった?」

言えない。キタナイ私をこの人には見せたくない。
「言いたくない・・か。
まぁええわ。
あのなぁ、吉澤。私昨日な、今日から放送のNHkの番組の収録があったんやけど。
この回が放送されるかわからんけどなぁ、こんなこと番組の先生が言ってはったんや日本人は自然や、幼児をきれいなものとしてだんだん汚れていくと考えるけどヨーロッパ人は自然や幼児から文化や大人という完成されたものが生まれてくるとかんがえるんやて」

「ええか、吉澤。大人になることはキタナクなることや。
それは事実や。
でもそれから逃げたらあかん。キタナクなっていく中で得るものもある。汚れ汚れて大人になるんや、人間は汚れてなんぼや」
12番手 姫子
「あほやな。なんちゅう顔。しとんの」
中澤の目がほんの少し真剣になる。
子供っぽい泣き顔を浮かべる吉澤を見つめる。

本当は吉澤の気持ちなんて分かっている。
中澤だって子供じゃない。
吉澤が自分に、先輩としての好意以上のものを持っていること。

それに応えられないことも。
そのクセに、そんな目で吉澤に見られることを心のどこかで気に入ってることも。
13番手 名無しひー誕B
でも、そんな気持ちを押さえ込む。
ひとつには吉澤のために。
二つにはいとしいあのひとのために。
三つにはもし吉澤になんかしてばれたときにあのひとから殴られるであろう自分の身のために。

「ええか、吉澤。愛っちゅうのもきれいきれいなもんとちゃう。
あんたはきれいな愛を求めすぎや。
愛っちゅうのは、相手も自分も束縛して傷つけて・・どうしようもないもんや。
でもだからこそすばらしいちゅうのもある。
どろどろしたもんがない愛はただのおままごとやで。
あんたを見てる人を大事に・・・」

中澤の言葉を遮るかのように荒々しく開けられた扉の音、続いてベッドのまわりのカーテンが引きちぎられんばかりに持ち上げられる。

「よっすぃ〜、怪我したってほんとだべか!?あ、手!大丈夫かい?、ほんとに大丈夫かい?」
14番手 名無し初めて
安倍だった。
目を大きく見開き、少し乱暴に吉澤の手を取っては、
「あ〜、よっすぃ〜痛そうだべ。大丈夫かい?大丈夫かい?」
と聞いてくる。

その迫力に中澤と吉澤は呆然としていた。
だが後ろからやってきた人物に、吉澤は息を呑む。

「あ、裕ちゃん…。よっすぃ〜、大丈夫?」

矢口だった。
15番手 名無しひー誕B
安倍が矢口と中澤、吉澤の顔を見るーー表情が変わる、我にかえる。

「ごめんよ、なっちはよっすぃ〜の心配できる立場じゃないだべさ。
それを忘れて騒いでごめんだべ。
じゃあね、よっすぃ〜。お大事に」
ぱたん、さっきとは対照的に、静かに扉が閉ざされる。

呆然としていた中澤が、ふっと笑いをもらす。
この人はよく笑うひとだけどひとつひとつのわらいが全部違う、吉澤はとりとめもなくそう思う。

「なっち、必死やったな。
吉澤、ああいうのがほんとの愛っちゅうやつや。
大事な人のためならどんなにみっともなくも、汚くもなれる。そういうもんや。
あんたはその思いに一度でも真正面から向き合ったことがあるんか?」
私はーーわたしは。

「ねぇねぇ裕ちゃん。なんの話?愛とかなんとか」

わたしはいつも逃げていたのかもしれない。大人になることからも、責任をもつことからも。

「お〜、矢口。会いたかったでぇ〜。裕ちゃんな、収録が大阪であったから矢口にあって、それから吉澤におめでとう言おうと思ってきたんや」

安倍さんからも矢口さんからもー中澤さんを逃げ場にして。

「矢口〜。裕ちゃんのことすきか?裕ちゃんが死にかけたら助けてくれるか〜?」
「なに言ってんだよ。アホ裕子!・・もちろん助けるけどさ!」
「そうか〜。もう裕ちゃん矢口にちゅーしとうてしとうて死にそうやねん。たすけてくれ〜」
「もう!」

安倍さんはいつも笑いかけてくれたのに。いつも助けてくれたのに。
そうだ、正面から向き合おう。安倍さんに、歌に、そして世界に。

「中澤さん!ちょっと行ってきます」
「おう!がんばっといで!」

矢口を抱えながら中澤が手をひらひらとふって笑いかける。コンサートの前のあの笑顔。
安倍さんと同じ、元気をくれるあの笑顔だ。

扉を開ける。
足を踏み出す。
そのとき、傷ついた手のひらと反対のこぶしの中に、あのストラップのかけらがあることに気づいた。

扉を開けた向こうにある窓から、そのかけらを力いっぱい放り投げる。

もう、偶像はいらない。
わたしは自分の手で世界を触り、自分の足で世界を踏みしめると決めたんだ。

さぁ、踏み出そう。駆け出そう。

「安倍さん!」

わたしはこの日、大人になった。


おわり


■ 姫子・注

頂いたカムアウトを元に、書いた人で分けてみました。
もし間違いがあったら教えてください。
(名無しひー誕Aさん、コテハンにしてもいいですか?それともこのままがいいですか?w)

それにしても、まさかリレーがこんなにちゃんと成立するとは、実は思ってなかった。だからすごく嬉しかった。参加してくれたみんなありがとう!企画してくれた名無しひー誕Aありがとう!
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